さわやか法話 69  一粒万倍

 一粒万倍「いちりゅうまんばい」とよみます。 田を耕す者は、一粒の種から多くの収穫を得ることができます。世間の利を求めるのに、これほど利や得を得る者はないと仏典に述べられています。そのように 善根をまくことによって多くの仏果を得られるということを言っているのです。
 一粒の米が万倍になる、これは並大抵の年数ではありません。辛い作業に農民が耐え忍んだことから、今でも暦に一粒 万倍の日として、毎月記されています。これは、一粒の良き種を播き育てるためには様々な障害があります。長雨や台 風、太陽 と水 の恵み悪病菌等々。 けれども、倦まず弛まずこれとの戦いによってはじめて一つの穂に実ることができ、それが繰り返されて一粒は万倍になるわ けです。
 このように、人間お互いが持っている仏性を磨いていくことは容易ではありませんが、仏性の尊さを信じて、邪 見を しりぞけて行くならば、必ずや仏の指示されているように、仏果に到達することができるのであります。 現在は機械化され、人手の省略されていることがありますが、暦に記されているのは、何事も始めるによき日とされ、特に仕 事始め、開店、種まき、お金を出すことに吉であるとされています。 こうした形のうえでなく、その言葉の心を忘れないようにとの、意図だろうと思います。